医療の細分化がもたらしたもの


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 医療の細分化は特定の病気を深く診ることには貢献しましたが、逆に患者さんを一人の人間として全体を捉えることのできる医師が少なくなってしまいました。さまざまな症状を訴えて総合病院を訪れても、自分の専門ではないからと、いろんな科をたらいまわしされるということは、総合病院では少なくないようです。また検査機器の発達は、体の細かい部分まで調べることを可能にしましたが、逆に検査で何でもわかるという風潮が広まり、検査で異常がなければ問題ないと言われ、途方にくれている患者さんも見受けられるようになりました。

 

 欧米諸国ではこのような細分化した医療への反省から、もう数十年前前から患者さんのありふれた健康問題に幅広く対応できる専門分野「家庭医療Family Medicine」、あるいは「総合診療General Practice」が登場し、その分野でトレーニングを受けた医師たちが、地域医療の担い手として活躍するようになりました。日本でも他の先進諸国に遅れながらも「総合診療科」という新しい科が大学病院を中心に誕生し、「年齢、性別、臓器を区別せず、心と体の両側面から患者さんの健康を捉え、患者さんのありふれた病気に対応できる」専門医を養成しようという動きがでてきています。名古屋大学総合診療部の伴信太郎教授は、細分化する専門医と対比し、「統合する専門医」という言葉を提唱しています。

 

 しかしながら、総合診療科を持つ多くの病院は、多数の診療科を抱える大病院であり、そのような病院に持ち込まれる健康問題は特殊である場合が多く、医学生や研修医にとってよくある健康問題を学ぶには残念ながら適切な場所と言えません。そこで、地域の診療所または医院と連携して、総合診療に興味を持つ医学生または研修医に勉強する場を提供しようという動きが全国各地で始まっています。勝川ファミリークリニックでは、そのような動きに賛同し、総合診療科で学ぶ医学生や研修医に教育の場を提供していきたいと考えております。当院を受診される皆さまにはご迷惑をおかけしますが、明日の医療を担う人材の育成にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

文責:北村和也