溶連菌感染症について


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 今年は溶連菌感染症の患者さんが例年より多いようで、当院にも溶連菌の患者さんや溶連菌を心配して受診される方が増えています。今回は「溶連菌感染症」という病気について、お話ししたいと思います。

 

 

溶連菌とは
 溶連菌というばい菌は大きく分けると、A群溶連菌とB群溶連菌に分けることができます。現在、流行している溶連菌はA群溶連菌と言われるもので、ばい菌が悪さをする咽頭炎の原因としてがもっとも多いものです。一方、B群溶連菌は女性の尿道に寄生していることがあり、出産のときに赤ちゃんに感染して、敗血症などの怖い病気を起こすことで有名です。出産の時に抗生物質の点滴をしたというお母さんもおられるのではないでしょうか。

 

溶連菌による咽頭炎
 溶連菌が悪さをする咽頭炎では、急な高熱、のどが痛い(扁桃腺が腫れて膿が付いている)、首のリンパ腺が腫れて痛いのが特徴です。咳が出ないのも特徴で、咳も伴っている場合は、溶連菌感染の可能性は低くなります。また溶連菌の出す毒素に体が反応し、皮膚に症状が出ることもあります。発疹は紅斑と呼ばれる赤い小さな発疹ですが、皮膚が紙やすりのようにざらっとなったり、かゆみを伴うこともあります。溶連菌感染を疑った時、のどの膿を綿棒でこすって試薬に入れると、10分ほどで溶連菌かどうかを調べることができます。

 

溶連菌の治療
 溶連菌は抗生物質のよく効くばい菌で、通常、抗生物質を飲み始めてから1-2日で解熱し、のどの痛みも改善します。抗生物質は昔からよく使われているペニシリン系と呼ばれるものが効果的で、通常10日間とい長めに服用を続ける必要があります。これは後述する溶連菌感染症による合併症を予防するためです。のどが赤いからといって、溶連菌の検査をせずに、中途半端な日数の抗生物質を服用すると、後日、正確な診断ができなくなったり、治療期間が短いために、合併症のリスクが高まってしまうことがあるので、抗生物質の安易な服用には注意が必要です。

 

溶連菌の合併症
 溶連菌の出すMタンパクという物質に対し、体の免疫が反応して、腎炎を起こしたり、リウマチ熱という病気を引き起こすことがあります。急性腎炎は、溶連菌に感染して2-3週間たってから、血圧が上がったり、顔や足はむくんできたり、赤黒っぽい尿が出たりすることがあります。これは抗生物質で治療しても予防することはできませんが、自然に治癒する病気です。やっかいなのが、リウマチ熱といわれる合併症です。リウマチ熱は、溶連菌感染から2週間くらいたってから、熱が出たり、あちこちの関節が腫れて痛くなる病気で、さらに心筋炎を起こして、心臓の弁を壊してしまうことがあります。最近では医者が一生で1人みるかどうかといわれるほどまれな合併症なのですが、起こってしまうとやっかいな合併症なので、これを予防するために抗生物質を最後まで服用することが重要です。

 

溶連菌の感染力
 患者さんの唾液などの分泌物を直接摂取すること(経口感染)で感染します。家族内感染は25%と言われています。潜伏期は1-3日と短めです。抗生物質を服用し始めてか24時間でに感染力はなくなるので、それ以降は幼稚園や学校に行っても問題ありません。

文責;北村和也